キミのとなり。
冷たい表情


──トモが朝食の席にいなくなってから1週間が過ぎた。


最初は心配してた美佳ちゃんだったけど、トモから“部活でいつもより早く出る”と言われたらしい。


……そういえば、美咲が“もうすぐ試合がある”とか言ってたっけ……。


でも、私は、なんとなくそれだけじゃない気がしていた。


修ちゃんも同じことを感じてるみたいだけど。


あえて私からそれに触れることはしなかった。


触れてみたところで、どうしたらいいか、わからない……。




「おいしい?」


美佳ちゃんが向かいの席から私の顔を覗き込んだ。


「うん、おいしいよ」


今日は美佳ちゃんの手作りベーグルのサンド。


美佳ちゃんはホントに料理上手。


お店で美味しいものを食べると、自分でも作ってみたくなるんだとか。



「美佳ちゃんはうちのママより上手だよね」


そんなことを言ってみたら、

「由貴ちゃんに怒られるわよ」

なんて言って笑った。


……美佳ちゃんも、この空間に流れる空気の違和感、みたいなものに気づいてるのかもしれない。



「修ちゃんは勉強頑張ってる?」


今度は修ちゃんに話を振った。


美佳ちゃんは実質、私たち3人の母親のようなものだ。


「まぁ、そこそこに」


コーヒーカップを手に微笑んで、だけど曖昧に答える修ちゃん。


「そうよね、修ちゃんだもんね」

「なに、それ?」


そう言われて、修ちゃんはちょっとだけ困ったように眉を下げて笑った。
< 66 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop