キミのとなり。
「……修ちゃんは、ちーちゃんが好きなの?」

「みっ、美佳ちゃん!?」


いきなり投げかけられた言葉に喉を詰まらせる。


修ちゃんは焦ることなく、そんな私にジュースを差し出した。


「修ちゃんにこんなこと言うのもどうかと思うんだけど……」


美佳ちゃんは修ちゃんの返事を待つことなく、言葉を続けた。


「ちーちゃんがうちのお嫁さんに来てくれたらうれしいのに」

「……美佳ちゃん?」


そう言った美佳ちゃんは、なんだか少し、寂しそうだった。




「ねぇ、修ちゃん?」

「ん?」


トモのいないことに少しだけ慣れてしまった満員電車の中、私は隣に立つ修ちゃんを見上げた。


「美佳ちゃん、なんで急にあんなこと言ったんだろう?」


“あんなこと”とは、もちろんさっきのこと。


「……さぁ?」


つり革に掴まったまま、修ちゃんは首を傾げた。


「でも」

「でも?」

「美佳さんはさ、みんなの気持ち、気づいてるんだよ」

「みんなの?」


今度は私が首を傾げる。


「そっ。智明の気持ちも俺の気持ちも、千鶴の気持ちも全部」


みんなの、気持ち。



「だって、俺らの母親でもあるわけだし?」


修ちゃんはそう言っていたずらっぽく笑った──……。


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