三日月の雫
「いや、だからいないって。彼女なんて」



そう否定する僕に向けられた疑いの眼差しは消えることがなかった。


柚羽と一緒にいるこの時間。

かんなのことは忘れたかった。

柚羽のことだけを、考えたかった。



「結崎さん、おかわりは?」



空になった僕のコップを見て、柚羽がジュースを手にする。



「いいよ、永輝で」

「えっ?」

「……なんか堅苦しい」



かんなとのことが完全に終わったわけじゃないけれど。

啓介さんに全てを話し、分かってもらえた今は、柚羽と少しでも一歩進みたかった。



「……永輝」

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