ラビリンスの回廊
からかわれたと直ぐに気付いた玲奈だが、そのわりに嫌悪感のない自分に戸惑う。
それでも今は何も考えたくなくて、その気持ちにも静かに蓋をした。
「跳ねっ返りとどっちがいい?」などといいのけるイシュトに、玲奈は蓋をした思考を頭の中から追い払う。
「しつけーよ。玲奈だって言ってんだろーが」
でもイシュトに『玲奈』と呼ばれるのを想像したが、それもなんだか鳥肌が立つ。
もやもやと考えていると、玲奈の前にヴァンが進み出た。
「レイナさん」
呼ばれた名前に反射的にヴァンの顔をみやる。
その真剣な面持ちに、玲奈は思わず息を止めた。
「申し訳ありませんでした」
深い謝罪の言葉と態度に、玲奈はそっと、息と言葉を吐き出した。
「いーよ……あたしも言い過ぎた、わりぃ」
頭上げろよな、と言った玲奈に向かって、ゆっくりとした所作で上体を起こしたヴァン。
そのあと「それから……」と前置きしたのち言った彼の一言に、玲奈は、やっぱりコイツら嫌いだ、と心の中で呟いた。
「ブロー王国ではなく、ブラウ王国です。
ずっと気になっていたもので」