ラビリンスの回廊
「占いではなく、預言です。
預言は『大いなる流れ』から言葉を預かるのです。
『大いなる流れ』は決められたもの。運命(さだめ)ですから、占いとは違います。
ですから、高貴な髪、つまり豊穣を司どる、金色の髪を纏うあなた様が北の神殿跡に立っていたのも、運命なのです」
すらすらと言葉を紡ぎだすエマだったが、「それに」と言いかけて口をつむぐ。
玲奈はそのことに気付かず、言葉が途切れた今とばかりに反論を返した。
「つーか。運命なんて、どこぞの少女漫画かってーの。
あたし悪いけどそーゆーのパス。
金髪なんて、ブリーチすりゃあ誰だってなるだろ」
「ぶり……?」
「ブリーチ!脱色!髪の色なんざ、いくらでも変えられんだろ?」
イライラと言い放つ玲奈に、エマは黙り込んだ。
「あたしに何をしろっての?
あたしはこの国を救う気なんてない」
その一言が、エマから言葉を引き出した。
「『大いなる流れ』への贄」
「あ゛?」
じっと玲奈の顔を、瞳を、エマは見つめて言った。
「姫様は、シェル王国の王子─ハマン様の身代わりとして、シェル王国の姫君となり、『大いなる流れ』への贄となるのです」