ラビリンスの回廊
王宮内を歩き回っても怪しまれない格好はいくつかあれど、女性となると数が限定されてしまう。
一番良いのは、王の護衛にあたる近衛兵になりすます事だが、女性の近衛兵はブラウ王国にいない。
動きやすさからいっても、兵の装束が良いのだが、女兵というだけで人目をひく。
近衛兵同士も、連携は高いだろうから、身元を訝しがられたら即刻捕らえられてしまうに違いない。
もしかしたら謁見の間に何度も行ったルノのことを覚えているものがいるかしれない。
王の近くまで行き撹乱するまでは、なるたけ危ない橋を渡らないようにしなければ。
選んだのは女官の服だった。
機動力はだいぶ落ちるが、ひらひらとした服に身を包み、やましさを感じさせない堂々とした素振りで、廊下を歩いた。
使用人や兵と何度もすれ違ったが、誰も不審に思うことなく通り過ぎる。
王宮内にてルノの顔を知る者は少ない。
王宮の外にいる兵ならいざ知らず、中を守る兵とは面識がないのだ。
ましてや今は女官の格好である。気付かれる可能性は低かった。
王宮内でルノの顔を知るのは、覚えているかはさておき、王と女王くらいであろう。