ラビリンスの回廊
確認をするだけで、通す気がないことはありありと見てとれる。
問答無用で追い返さないのは、ルノの顔が少しでも記憶にあるからか。
しかしルノの正体まではさすがにわからぬようで、見張りの二人はルノを牽制するように顔をそらさず、互いに横目で相手の動向を窺った。
それはほんの瞬きの間だったにも関わらず、ルノは二人の槍が交錯しているところ目掛けて飛びかかった。
見張り二人は、すぐに体勢を立て直し、槍を突きつけた――つもりだった。
人というものは、ときにとても騙されやすい。
ルノが丸腰で、無謀としか考えられない攻撃を仕掛けてきたために、すぐに制圧出来ると無意識に踏んだ。
その結果、一瞬ではあるが、彼らは槍を扉から離したのである。
ルノの狙いはそこだった。
彼女は武器も力も持っていない。あるのは素早さだけだ。それを有効に生かした。
扉に鍵を掛けていないのも、見張りにとっては災いだったろう。
王は、以前は鍵を掛けていた。
しかし煩わしいとの王妃の一言で、鍵を掛けずにおく習慣となってしまったのだった。
見張りが扉を見たときには既に、ルノの姿はなかった。