女優デビュー
今回のドラマは、爆発的にヒットしたケータイ小説をドラマ化したもので、
脚本は原作に忠実に書かれているらしいけど、役名は原作者の意向で俳優と同じ名前に変更されていた。
だから台本を見ると、私の役名は「チナツ」となっている。
奏真君は「ソウマ」、悟君や学さんも「サトル」「マナブ」だ。
初めてドラマをやる私には、役名が俳優さんの名前と同じなのはわかりやすいと思ったんだけど、奏真君は照れくさいらしい。
そういうものなのかな?
「原作者、リィラちゃんだっけ?
なんでドラマ化するのにそんな注文出してきたんだろうな?」
「うーん……」
私は首をひねった。
「ケータイ小説って書くのも女子中高生が多いらしいじゃん?
リィラちゃんも、そうなのかな?」
「さあ……、どうでしょう。
私、今回リィラさんのプロフとかブログとかも読みましたけど、年齢とか職業とかは書いてなかったんですよね」
「ふうん。
覆面作家ってワケか。
そういえば、今日の顔合わせにも来てなかったしな」
「はい。
でも、もしかしたら、リィラさんって、宮崎さんとか、安西さんとかのファンなんじゃないかって気がします」
「ファン?」
「ファンだったら自分の好きな俳優さんが自分の書いた小説の中の登場人物になるって、すごい嬉しいんじゃないかなって」
「ああ、なるほどね。
じゃあ、きっと悟のファンだな。
悟が主人公だしね」
「ああ、そうかもしれないですね」