AEVE ENDING
墜ちた小鳥はもう既に息絶えていたのかもしれない。
太陽は既に、喪っていた。
(助けて)
愛しい、あの人を。
「どういうことですの」
低く吐き出されるそれは、ただ静かに震えている。
「ビル」から帰還した朝比奈は悔しいが為に、医務室の前で拳を握り締めていた。
その白い頬にはちらほらと細かい傷は見えるが、本人には気にした様子すらない。
彼女の隣に立つ武藤だけは、それが許せないようではあったが。
そんなふたりを前に、ササリは心中、溜め息しか吐けなかった。
··
―――あれから数日。
「ビル」にいた生徒、教諭達は奇跡的に全員軽傷で済み、雲雀と倫子だけが集中治療室から出てこない。
桐生の行方は、わからなかった。
それだけでも頭が痛いというのに。
(このふたりったら…)
「私はなにも面会させろと言っているわけではありません。橘倫子と雲雀様の容体をお伺いしたいだけですわ」
三十分前からこの調子である。
武藤はただの付き添いと置いておくとして、問題は朝比奈にあった。
「…だから、まだわからないのよ。貴方が聞いて安心できるような情報はまだない。まだ、わからないわ」
なるべく優しく言い聞かせているというのに、この朝比奈、先程から泣きそうな視線をこちらに向けてくるのだ。
「助かるか助からないかくらい、教えてくださってもいいでしょう!」
うるうる。
今にも溢れんばかりの水の膜が危うげに揺れている。
「だからね…」
また、繰り返しの問答。
気持ちはわかる。
痛い程、よくわかる。
(わかるんだけど…)
朝比奈達で二十一組目、である。
雲雀を尋ねに来るアダム候補生達が、パートナーと友人と恋人と、と押し寄せてきたのだ。
喧しさに堪えられなくなった奥田にとうとう相手役を言い渡されて、今に至る。