AEVE ENDING
実際の話、雲雀の容態は落ち着いていた。
体の作りは標準と変わらないというのに、その体の鍛えられ方といえば、尋常じゃなかった。
『…サイボーグか、こいつ』
ロビンが感嘆として呟いた。
当然だ。
その肉体は華奢であるのに、貧弱な奥田よりずっと華奢であるのに―――これには奥田は異論があったらしいが―――、そのタフさといったら、まさしくサイボーグ並みだ。
『意識ねぇのに、完全に昏睡してんのに、本来の治癒力を能力で高めて高めて高めて、最大限まで自然治癒を可能にしてる』
衣類を剥いた先、炭化した皮膚の下に新しい皮膚ができていたのだから驚きだ。
『ブキミー、…』
ロビンがぽつりと呟いたそれはまさに、だった。
―――神の具現か、或いは。
『エイリアンじゃねーの』
あぁ、その言葉が一番しっくりくる。
既に人類の規格を外れている。
新人類ですら、ない。
『倫子と一緒だよ』
そう、アダムでも人類でも、ない。
(雲雀さんはもう、安定してる)
予想よりずっと早く落ち着いた。
今はロビンと奥田が倫子を診ている。
「お願いよ、もう諦めて帰ってくれないかしら」
引かない朝比奈に少々ウンザリする。
ササリが心配なのは雲雀ではなく、倫子なのだ。
大事な妹分を、ロビンなどという若造に任せていたくはない。
(ただでさえ倫子の胎内は複雑な縫合がしてあるのに…)
見せたくないのだ。
あとから合流した立場として、余計な口出しはしたくないが。
(…倫子は女の子なのよ。同年代の男に皮膚の中身を覗かせるなんて、言語道断だわ)
それに、あの胎内。
心臓以外の臓器全てが、普通の人間とは違う位置に押し込まれた、それ。
めちゃくちゃにばらされて、もう一度組み直された、精密な地図のようなそれを、倫子を知らない男に暴くなど。
(…あの金髪ワカメ、倫子をバケモノ呼ばわりしたらぶん殴って海に流してやる)
内心で悪態を突きつつ、早くこの場から去りたいと願う。