AEVE ENDING



新進気鋭、橘投手!既に雲雀選手以外、眼中にないようです!
豪速球ならぬ豪速石が雲雀選手の後頭部を狙っています!

雲雀に引っ付くようにして歩いていた朝比奈が悲鳴を上げる。
後頭部的中、勢い良く飛んだ石に大満足。

石よ!そのままそのサディストの脳天をぶち抜いてまえ!


「橘!貴様なにを!」

梶本の拳骨が落ちる。が、それを倫子が器用に避けたと同時、雲雀も動いた。
脳天直撃だった石は雲雀の真横を勢い良く飛び去って、掠りもせず。

ボッチャン…。

先の海面に、落ちて。

コポコポ…。

沈んだ。

決死の豪速球が沈むさまを視認した倫子からは舌打ちが漏れる。
それに引き寄せられるように、一同の視線が一斉に倫子へと注がれた。

周りの人間にしてみれば、雲雀は八つ当たりで石を投げつけられた事になる。
そうなれば、責めるべきは倫子ひとりだ。

「ああんもう…、倫子ってば短気なんだからさぁ」

険悪なムードのなか、奥田の暢気な声だけが響いた。
そんな奥田の隣に立っていたミスレイダーに至っては、余りの事態に口を大きく開けて青ざめている。

「…君も馬鹿だね。自分から敵ばかり増やしてちゃ、払いきれなくなるよ」

たった今、自分を殺しかけた倫子を無表情のまま見やり、雲雀は親切にも助言をくれた。
倫子にしてみれば余計なお世話のなにものでもない。

そんな雲雀に更に苛立ちを捲し立てられてしまうのは、もはや性質(タチ)でしかなかった。

「放っとけ、これが性分なんだよ。このなすび!サディスト!」

飄々と先へと進む雲雀を睨み付けながら、倫子は腹立たしげに頭の悪い悪口を叫んだ。
それに堪えかねた様子で、朝比奈が泣きそうになりながらふたりの間に割って入ってくる。

「橘!あなた、なんて真似を!」

わなわなとその華奢な肩を震わせて、殺人未遂犯に果敢にも詰め寄る。
そのビー玉のような瞳には水分の膜が張っており、気迫に圧された倫子は冷や汗を垂らしながら苦笑いを浮かべるしかない。

「筋力で投げた飛石を雲雀様が避けられないわけはございませんが、危ない真似はお止めなさい!周りにも被害が出たらどうするのです」

なんだかんだ言いつつまともな事を言われている。

反論は不可のようだ。




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