AEVE ENDING
「そいつ、殺したい…」
ぼそり、俯いたまま吐き出されたそれに、ロビンは思わず目を見張る。
音もなく無気力にぶら下がった両手は拳を握っているわけでもないのに、今にも跳び掛かってきそうな恐怖心が、沸いた。
その力のない指先に、皮膚を破られ爪を立てられる。
―――『そいつ』。
(俺のこと、だよな…)
戯言とはいえ、まさかあの倫子がロビンにそんなことを言うとは思わなかった。
(…って、自惚れだな)
殺意を向けられても仕方ない言葉を吐いた。
感情に任せたとはいえ、思ってもいないことを。
(こいつのこと、ちゃんと知ってるのに)
それなのに『妹殺し』、なんて、我ながら酷いことを言ってしまった。
「口は災いの元って知らないかなあ、ロビンくんてば」
奥田がゆっくりとロビンを振り向く。
その声色はふざけているが、しかし眼は嗤っていない。
責められているのか。
「倫子はねぇ、スイッチ入っちゃうと大変なのよ?そういう躾をされてるから、君みたいな坊っちゃんなんか、簡単に殺されちゃうからね」
意味深な発言を漏らし、奥田はゆっくりと倫子から離れた。
「…雲雀くん、倫子を」
そうしてロビンに背中を向け、雲雀に向き直る。
(…な、)
「っ、待てよ!」
つい、呼び止めてしまった。
この空気。
ロビンだけが除け者だと言われんばかりだ。
「なあに、まだなにか用なの?」
奥田が苛、とした様子で声を低くした。
依れた白衣がここまで感情を露にしたのを、ロビンは初めて見た。