AEVE ENDING






首を両手で包むように覆われて、すぐに囲われてしまった体に息を飲む。

唇を引き裂いて入ってきた生きている舌が汚れを掬い取っては逃げていく。

(…それでもすぐに戻ってきて、私をめちゃくちゃに苦しめるんだ)




「僕が望むまま、従いなよ」

こんなにも熟れているのだと、雲雀が小さく息を吐いた。

紅茶の香りが染み付いた体を意思とは反し抱き寄せて、その舌を吸ってみせる。

そうすれば彼は喜ぶのだと、ついこの前に知った。


「…っ、」

醜く喘ぐ喉元に歯を立てられる。

首の軟骨を、皮膚を喰い破って喰らうように食むその仕種を、雲雀はよくした。


(本当は、喰べてしまいたいのかな)

肉を裂いて、内臓を引きずり出して、雲雀に侵された心臓を喰い破るのか。

命の糧を得るように、本当の意味で。


(…私は、汚したいわけじゃないんだ)

雲雀の舌が、指の隙間を埋めていく。
芯から奥まで、支配したいと、願っている。


「…私、は」

震える指でその鼻梁を擽りながら。


「ん、」

短い指でその顔を覆えば、見かけだけは穏やかな雲雀の眼が眩しげに細められた。

真っ赤な血を塗って、私色に染めていきたいわけじゃない。


「わたし、は」

喘ぐ合間に雲雀の腕を取り、心臓に導いた。

男が満足するような膨らみは持ち合わせていないこの体が、脈打つ部分。


「穢して欲しい」

誰よりもあんたに、めちゃくちゃに穢して欲しい。


「たちば、」

雲雀が目を丸くする。

馬鹿なことを口にしている自覚はあった。

それでも、もうなにも考えられないまま。


(…好きなんだよ)


息を止めることを躊躇うのは、死んではもうあんたを見ることが叶わないから。

あんたが私を呼ぶ声を聴けないから。

私に触れるあんたの指を、感じとることができないから。


―――私は、この暗闇の海から這い出て。




「染めてよ、」


息も吐けないくらい、生きたまま。







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