AEVE ENDING






「…っ、」

ズルリ、と皮膚を剥がす勢いで乱暴に衣服を剥かれた。
野外の空気の冷たさに息を飲み、肌は正直に粟を浮かせる。


「…君は莫迦だね、」

嘲りを浮かべた唇が、そのまま肉を食んだ。

心臓の位置。

そうして命を、吸うのか。




「抱き殺されても知らないから」

熱を孕んだ呼吸に乗せて欲情を描く。

雲雀の、高揚した顔。


(初めて見る顔だ…)


―――ねぇ、こうして進んでいけたらいいのに。


(互いにすべてを曝し合って)


そして最期は、互いに息を殺し合おう。







「…雲雀」

テラスの冷たい床が気持ち良かった。

散らかったシャツの上に半裸で横たわったまま、見上げる雲の流れは速い。


「このまま全部流れていって、空が見えればいいのにね」

裸のまま抱き合って、ぐるりと視界を巡らせて見る世界。

喘ぐ瞬間に垣間見た「世界」を前に、すべて留める。

呼べば、仄暗い星を思わせる静謐の眼が、ことのほか素直にゆっくりとこちらを見た。

巡った視界を、浅い闇色をした空が占める。

こんな時なのに、その高く揺るがない空が愛しかった。



(地球は、美しい)

桐生の言葉が今になって、心臓にじわりと染みてくる。

灰色に発光する重苦しい雲と影の落ちた雲雀の綺麗な顔だけが、世界を占めていた。



「桐生は、ただ純粋に愛してたのかな」

この素晴らしい世界を。

たおやかで麗しく、生を燃やしながら静謐に生きている、我らが星を。


「だから、見たかったのかもしれない」

人の業は浅ましく狂おしく、この優しい世界を蹂躙してしまうから。

美しく在った世界を、もう一度、と。






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