AEVE ENDING










「見てみたいなあ…」


真鶸がぽそりと呟いた。

テラスの手すりに腰掛けたまま、ぐんと首を反らして暗い空を見上げている。

その黒曜石のような瞳に、世界はどう映っているのだろう。


「温かい太陽や、それに照らされる眩しい海、青空や星空は、……僕が想像しているものより、ずっとずっと、綺麗なんだろうな」

温室にいた頃、寂しくて、よく、空想していたんです。

そうはにかみながら笑う真鶸に、心底からその願いを叶えてあげたいと思った。


(私にそんな力はないけれど、それでも、いつか)



―――いつか。





「……見れるよ」


真鶸の隣で、澄んだ声が約束の言葉を上げる。

意外な声に、真鶸と一緒になって見つめれば、雲雀も同じようにこちらを見つめていて、そして珍しく、笑みを浮かべていた。


(それは神の愛だ)





「…いつかきっと、見せてあげる」


笑みが深まって、情けない心臓が、ずくりと鳴く。

見つめられるだけで、一点の曇りなく慈しまれているような気分に陥る、その慈雨のような、笑み。



(…雲雀、)

ちらりと絡み合った視線が、倫子に全てを伝えていた。

(…うん、そうだね)

自然と笑みを浮かべた倫子に、雲雀のそれもより一層深みを増す。


―――それだけで、世界は歓喜する。





「兄様…」

真鶸が震える声で雲雀の名を呼んだ。

それを見つめながら、真っ直ぐに、受け止めて。






「だから待ってて、真鶸」



約束をしよう。


私達が幸せになるための。

私達が誰かを愛するための、小さな約束を。



―――約束を、しよう。








< 1,161 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop