AEVE ENDING
「兄様…、倫子さん?」
式の最中、大勢の招待客が宴に興を示しているなか、真鶸はただひとり不安げな面持ちで野外の式場を歩きまわっていた。
西部箱舟の、一等景色がいい広大なテラスに式場は設けられていた。
なんの名残か、高い尖塔の先には十字架が掲げられている。
それをチャペルに見立てて、式は行われた。
上座には客達に囲まれた主役が見える。
シャンパンを手にするササリ、ロビン、ニーロにジニー、朝比奈に武藤、しかし、肝心の二人の姿がない。
花嫁達を着飾った張本人であり立役者の、橘倫子と雲雀の姿が、だ。
(確かに兄様は席には出席しないと言っていたけど……)
しかしこのざわつく胸はなんだろう。
十字架のすぐ目の前に広がる絶壁の大地に作られた、白亜の庭のようなテラス。
高々とのびる天空は相変わらず深い雲が覆っていて、雨はないが薄暗い。
チラチラと光るランプの灯りは、昼であるというのに穏やかに辺りを照らしていた。
ざわつく人の波の中で、けれどやはり、二人の姿はない。
気配を探ってはみるが、神の称号を持つ兄がやすやすと感知させてくれるわけもなく、真鶸はひとり途方に暮れた。
「…真鶸さん、どうかなさいましたか?」
耳を擽る清楚な声で、彼女は現れた。
たおやかな痩身をミルク色のシルクに包むアナセスに、真鶸は思わず言葉を失う。
この一年間で、何故か聰明で美しい彼女との仲が深まった。
「アナセス、すごく、すごくきれいです…」
ぼんやりと夢現にそう口にした真鶸に、アナセスも白磁の肌をほんのりと染めた。
さすが結婚式である。
そこここでピンク色の花が咲き乱れてしまった。
例として挙げるならば、武藤と朝比奈の両名。
「アミさん、綺麗ですね。でも、折角の結婚式ですから、晴れた青空の下でお祝いしたかったです」
そうしてアナセスは、可憐な花が咲いたように微笑う。
「青空…、うん、そうですね」
きっとアミの為に用意された純白のドレスは、陽の下でこそ最も輝くのだろうに。
この腐敗した世界はあまりにも永い間、闇に支配され続けた。
(この重く暗い幕が開くことは、もう二度とないのだろうか…)
人類の幸せは、陽の下でこそ実りをつけるだろうに。