AEVE ENDING



東、西、とは。

東は東部箱舟の通り名だ。西部箱舟と同じく、全国に点在するアダムの教育収容所のひとつである。

けれど、そのなかでも「東」は特別。
各地に点在する箱舟のなかでも最も能力の高いアダムだけで構成された名門校であり、私達西部アダム達にとって東部箱舟は羨望と嫉妬の的なのだ。
質の高いアダムだけを集め、在籍するアダムは全員 男子のみで構成されているという日本唯一の箱舟男子校である。

私達西部箱舟と東部箱舟は、宿舎や学び舎が河を挟んで向かい合うように建っている。
西は廃れた海辺側に建ち、東は復興目覚ましい中心街側に建つ。
収容所の距離が近いこともあり、よく合同授業が行われるのだが。

「毎回毎回、ただの八百長試合みたいなもんだわ」

切磋琢磨を目標とした競い合いが基本の授業なのだが、西部のアダムが東部のアダムに勝った事など一度もないらしい。
彼らは高い能力を有するだけでなく、高い気位をも持ち合わせていて、いやもう、東に太刀打ちできない西への皮肉の応酬ったら。


―――東部箱舟。

その名門のトップに立つ「ヒバリ」、という名の男。
成績優秀、眉目秀麗、高い地位にある官僚の子息。
非アダムの両親から出生したにも関わらず、「完璧な血筋」のアダムとして崇められているという。
優秀過ぎて、国政にも顔が通じるある意味異色のアダムだ。

「修羅」というふたつ名で古今東西のアダムに畏れられているとかなんとか。
そんな男が束ねているのが、「東部箱舟」らしい。
あまり東部と関わりを持たない私の耳にまでその功績が届くくらいだ。

(顔なんて見たこともないけど)

それにしても、明日から長期合同授業だって?

「初耳だ」

なんとはなしに洩らした一言に、アミが目を丸くした。

「初耳って、一ヶ月から告知されてたわよ」

そんなこと言われても。

「連絡網もテレパスじゃん。読みとれなかったら、先生が話をしてるかどうかすらわかんないし」

呆れている友人に、唇を尖らせて不平を述べた。
聞こえないもんは聞こえないのだから、どうしようもない。

私には、他人の声を聞く気がもとよりない、とはミスレイダーの辛辣なお言葉。



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