AEVE ENDING





「…ううわ、やらしー」

しんと静まり返った食堂に、アミと私の間抜けな声が響く。
思いがけない刺激的なショットを凝視している男子生徒達がやけに静かだ。笑える。


「…カイチョー、それ勝負下着ですかぁ?」

呆然とする下半身露わの会長を見やり、アミがにやにやと口を開いた。
わたしら、性格悪いな。

「っ、…なっ…っ!」

途端、事態を把握したらしい彼女の顔が、耳まで真っ赤に染まる。

「今度はお口パクパクしちゃって、金魚じゃないんだから」

その姿はまるで、空気を求めて必死にもがく酸欠の魚。
そんな憐れな会長の胸倉を乱暴に掴んで引き寄せた。近距離まで近付いたブラウンの目を、間近で見据えて。

「弱い者いじめはミットもないよ、カイチョ?」

にたりと笑って、律義に結ばれていたタイから手を離す。
呆然自失のその身体を軽く押してやれば、想像すらしていなかっただろう自らのストリップに、会長はガラス玉の目に涙を溜めて走り去ってしまった。
彼女の姿が見えなくなると、食堂は再びざわめきを取り戻す。
騒ぎの前より、そのざわつきをずっと大きくして。


「あちゃあ…」

半裸の会長が姿を消した扉を見ながら、私は今更な罪悪感に襲われていた。
泣かせちゃったじゃん。やりすぎたかな。

「でも、仕掛けてきたのあっちだし」

私の思考と被るようにアミが口を開いた。もしや。

「…ごめん、飛ばした?」
「飛ばされた」

アミが無邪気にぺろりと舌を出す。
この無意識に思考を他人に飛ばすクセ、なおさなくちゃなあ。
プライバシーもなにもない上に、自分から発信しちゃってんだから性質が悪い。
これじゃ露出狂となんら変わりないのが虚しいったら。

「それにしてもあの子、どうしてあんなツンケンしてたのかな」

以前から遠巻きに嘲られてはいたのだろうが、直接的な接触は今回が初めてだ。
今更ながら、彼女の不機嫌ぶりに首を傾げる。

中断されていたサンドイッチ制覇を再開しながら、私は食堂の壁を覆うばかでかい窓に目を遣った。
暗澹とした暗い空は相変わらずで、なんとも気分が重い。
そんな私の呟きにアミが律儀に答えてくれる。

「明日から東との長期合同セクションが始まるからね。西部のトップとして、なんとか見栄張りたかったんじゃないの?私達西は負けっぱなしだし」




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