AEVE ENDING






───例のルートから被験体が届きました。
陰性、陽性値ゼロの完全な人間です。

姓名、橘倫子。
十五歳。
性別、女。

出身は元九州と呼ばれる田舎だそうですが。




(───女の子供か。女は体力がなくて実験も続かない。男を寄越せと言うたに)
(───仕方あるまい。男はこの荒れた地でも使い道がある)
(───あぁそれと、アダムのDNA配列のサンプルも届きました)


(───ふむ。ならば実験を始めようか)
(───我々の手で、神にもっとも近しい、至高の存在を)









「相変わらず、生意気な面をしておるな…」
「アレになった時点で廃棄したとばかり思っていたが」
「奥田はいい腕を持つ。アレをこうして元に戻せたとは」

三人三様、異様な雰囲気を纏った学者達は、胡乱な目つきで倫子を観察した。

今にも飛び出してしまいそうにぎょろついた眼と、小さな口の隙間から、ちらちらと抜けた茶色い歯が垣間見える。
全身から穏やかでなく発せられる不気味な雰囲気が、尋常じゃない。

話についていけない真醍は眉間に皺を寄せ、気分を害したとばかりに顔を歪めている。
雲雀の表情は、窺えない。

三人の男を前に、倫子は切れた唇を舐めた。

(…久しぶりだ。この、異様な空気)

じっとりと滲み出す、異質な空気と、腐蝕した記憶。


「―――橘。まさか貴様が修羅と行動を共にしているとはな…。奥田の差し金かね」

あんた達には関係ない、と倫子が口を開きかけた時、背後に居た真醍が前に進み出た。

「おいこらテメー等、人質をどこにやった?」

苛立たしげに吐き出した真醍に、科学者達は癪に障る笑みを浮かべる。




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