AEVE ENDING





「はて、人質とな…。さぁて、つい先、捕らえたばかりの小僧共ではあるまい?」

厭らしい笑みを張り付けた禿げた男が、壁に付いたスイッチを押す。
鈍い音がして、一際大きいモニターが現れる。
そこには、実験用ベッドにくくり付けられた二人の男が映し出されていた。

「…鈴木、原田」

倫子が、苦虫を噛んだように呟く。
やはり捕まってしまったのか。


「───おい…。島の人間はどうした」

倫子の呟きに、モニターに映った見知らぬ男二人が雲雀達の仲間だと推測したらしい。
真醍は更に声を荒げ、怒りも露わに科学者達に掴みかかった。
華奢な体を襟元で持ち上げられ、白衣の男は苦しげに息を吐いた。

それでも、ぐ、と襟首を絞められながら、科学者はにぃと抜けた歯で嗤うのだ。

「フン。まるで成果を出さぬモルモットなど、とうの昔に打ち棄ててやったわ」

そう言って鼻で嗤う男を、真醍は壁に向かって乱暴に投げ棄てた。
けたたましい音を立てて実験用器具のなかに頭から突っ込んだ男は、動かなくなった。


「───真醍、」

更に残る二人に掴み掛かろうとする真醍を、倫子が半ば叫ぶようにして制止する。

「止めるな!」

完全に頭に血が昇っているらしい。
倫子の声を叩きつけるように怒鳴りつけ、真醍はもうひとりの学者へ掴み掛かった。

「真醍!」

しかし、倫子も引かない。
悲鳴のような叫びに、真醍ははっと正気に戻り躊躇した。
男の襟首を掴んだまま、倫子を情けない顔で見遣る。

「…大丈夫。島民は生きてる」

そんな真醍の視線を真正面に受けながら、倫子は落ち着いた声でそう言い切った。

「ハッ…、なにを根拠に」

学者がすかさず口を挟むが、倫子は動じない。

「こいつらは学界を追放された研究者だよ。機材も薬物も、まともに実験できるほど所持してない」

実験体として連れてこられた民は、この地下のどこかに幽閉されている筈だ。

「───或いは世話係として生かされてる筈。この死に損ない達は、研究以外はなにひとつ満足に出来ないバカ共だからね」

投げ飛ばされた男に冷ややかな視線を送り、倫子は舌打ちした。
その言葉には妙な慣れ親しみからくる説得力があり、真醍は素直に男の襟首を離す。




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