AEVE ENDING
―――それから数時間して、箱舟からの船が到着した。
北の島の公的港路に堂々と入ってきた船は、行きに生徒達が使用した小さなものではなく、随分と豪奢なクルーザーだ。
(…なに、この差)
雲雀をのぞく一同全員が同じことを考えた瞬間であった。
「なんか…、馬鹿が立ってる」
錯乱状態から回復した鈴木の言葉に、倫子も目を剥く。
クルーザーの先端に立つ、白衣を棚引かせている男。
「…おくだ、せんせい?」
倫子が呟く前に、朝比奈が呆然と呟いた。
「なんだぁあの男、馬鹿丸だしだべ」
まさか猿にまで馬鹿呼ばわりされるとは。
船首に仁王立つ人影。白衣を潮風に靡かせた男が片手を高く高く挙げた。
「ヤッホー!逢いたかったぁぁあ!みーちこちゃーん!」
正真正銘のバカである。
その拡張器並みにやかましい男を完全無視で、倫子は北の島を見上げた。
雨が弱まった今、しかし高く聳える城の頂上には重苦しい暗雲が立ちこめている。
───嫌な雲。
予定していた日程が全て狂わされたこの北の島でのミッション。
過去を抉り出され、騒ぎに巻き込まれ、いっちょ前にこどもを救ったりして。
(…半日と少ししか経ってないのに、随分と色々あった気がする)
そう感慨深く城を眺める。
そんな倫子の隣に立っていた雲雀に、真醍がす、と詰め寄った。
「雲雀ぃ」
「…なに」
にったりと含み笑う真醍に、不愉快そうに眉を顰めて見せる。
しかし、その程度の牽制など真醍の敵ではない。
猿顔の男はひどく楽しげに雲雀の肩に腕を回した。
「鉄仮面かと思ってたけど、カワイイとこあんじゃねえか!」
そしていきなりそれである。
「…なにが、言いたいの?」
雲雀には、人語を話す猿がなにを言いたいのか全く理解できない。
「おいおい、誤魔化すなよ。俺には全部お見通しだってぇ!―──チェリーちゃんっ」
バコンッ。
言い過ぎは承知の上で撲られたのは仕方あるまい。
腕力で思い切り叩きのめされた真醍は、しかし諦めなかった。