AEVE ENDING







「橘、おはよ」

箱舟内に設置された食堂は今朝も今朝とて生徒達で賑わっていた。

そんな食堂で、アミは友人を見つけ、その呼び掛けに倫子が振り向く。

「アミ…」
「ぎゃ!あんたその顔なに!」

振り向いた倫子の泣きじゃくった顔。
その右頬、赤い痣。
殴られた痕だ。

「…っアミぃいいい!」

駆け寄ってきた倫子を腕に受け止め、アミは驚きを隠せない。
わんわん泣く倫子を宥めながら、顔を上げさせれば唇の端も少々切れているようだった。

(…可哀想に)

東部と西部合同のセクションが始まってまだ二日。
ルームメートでなくなってやはり二日。
自分もペアパートナーとセクションを受けたが、こんな傷を受けるとは何事か。


「やだもう、腫れてるじゃない。誰にやられたのよ」
「…ス、スズメ」
「は?スズメ?」

俯いたまま唇を噛む倫子が、わけの分からないことを言う。

スズメって何?
頭ぶたれておかしくなっちゃったのかしら。

「あの鳥!もう我慢の限界!焼き鳥にして喰ってや……ぎゃっ!」

涙を湛えながら叫ぶ倫子の横顔に、パックのミルクが飛んできた。
―――飛んできた方向を見れば、倫子のパートナーである雲雀の姿。
物凄く周囲の注目を浴びている。


「あ、お早う、雲雀さん」
「…おはよう」

挨拶をすれば無表情で返してくる。
返してくるだけマシだな、とアミが感心した瞬間。

「てめぇええ!朝にくわえここでもかよ!ふざけんな!見ろよこの顔!」
「不細工」
「そうじゃねぇだろ、この焼き鳥ぃいい!」

目の前で喧嘩を始めた二人を見やり、アミは目を丸くする。
あらまぁ、随分と仲良くなったものだ。

感心した。

他人を寄せ付けない雲雀を懐柔――しきれてないけど――した倫子にも、他人に噛みつくことが癖になっている倫子を手懐けた――しきれてないけど――雲雀にも。




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