AEVE ENDING







雲雀が後にした貧困エリアでは、実は大変な騒ぎが起こっていた。

勿論、放出された地下水が原因である。

国の役員が貯水量と地盤陥没の危険性を調査しに現れ、水分中に混入している成分を分析し、汚染されていない完璧な地下水と断定されたことにより、都管理の井戸の建設工事を行うと言い張ったのだ。
この水を貧困エリアに三割、整備中の街の方に七割配給する、などと馬鹿げたこと──役人にしてみればもっともなことなのかもしれないが――を口にし、暴動が起き掛けた。

貧困地区の住民達の怒濤の反抗に、役人は武力行使に乗り出す始末。
しかしそれで怒りがおさまるわけもなく、生活が掛かっている貧困エリアの住民達は引かない。

役人の露骨な横暴っぷりにくわえ、本日の奉仕作業で貧困地区の人々にインスタント並みの情が移っていたアダム達も参戦し、事態は混乱と深刻を極めた。

しかし、ここで活躍したのが西部箱舟会長、朝比奈雛だった。

地下水の放出は雲雀がしたものだと完全に信じ込んでいる為、役人の言いなりになってたまるかと奮闘したのである。

都の武力行使をサイコキネシスで押さえつけ、役人達に一喝。

もともと、無理な要求と承知していたこともあってか、朝比奈の語る正論に役人達はひとまず引きの体勢に入った。

この件で朝比奈と雲雀の両名の名が実力共に箔付けされたのは言うまでもない。

もともとカリスマだった雲雀は無欲で良心的な神だと更に崇められ、朝比奈に至っては神の右腕と呼ばれるような事態にまで発展したのである。

貧困エリアの住民達は朝比奈に頭を下げ、その場に姿を現さなかった雲雀に心の内で感謝の念を唱えた。




しかし一部の子供達は、「おねーちゃん、ありがとう」と叫んでいたと言う。

周囲の大人達は、雲雀のあの美貌故、彼が男だと気付かなかったのだろうと苦笑したとか。

今回一番の功労者の名は、最後まで皆の間に上がることなく、本日のセクションは終了した。





< 300 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop