AEVE ENDING






(―――橘が寝てて良かった)

もし意識があったなら、時間を無視してこの小さな生き物達と遊び回るに決まってる。
背後からバイバーイやら、またねーやら聞こえてくるが、それを一切無視して雲雀は貧困エリアを後にした。


知らず、雲雀は深く溜め息を吐き出してしまう。

腕の中でへばる彼女の引き出した清廉な地下水は、留まることを知らずに放出され続けていた。


土地に潤いを与えるために。
人々に安らぎを与えるために。

―――まるで彼女が望むもののように、溢れ出して満ち足りて、途絶えない。



(…神を気取るような、所業)

倫子を非難しているわけではなく、このセクション自体が、まるで。

医学上、アダムはただの病人に過ぎない。

医学的に見れば、『人として欠陥している』。

―――無力で在るべきだったと、今でも思うが。



(…そうなれば、この星は終わりか)

ならばこの欠陥は、神が遣わしたものなのだろうか。

何故、亜種として人類より劣らなかったのか。

神はなにを、考えている。


(…神なんて、存在しないのに)

冷徹な無神論者は荒廃した土地を高みから一望し、天に悪態を吐いた。





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