AEVE ENDING
「僕をバカにしてるの?」
柔らかな声。
しなやかな指。
「─―─…っ、!」
衝撃の走る肩甲骨。
捕まれた喉がこくりと鳴いた。
細い指先で絞め上げられた器官が、本来の機能を果たさずにもがいている。
「、…っ」
呼吸を求めて鍛えられた腕を掴むが、無駄な抵抗に終わった。
「いい加減、口のきき方を覚えたらどう?」
首を絞める右腕に更に力が籠もる。
壁に背中を擦られて、足が浮いた。
「…あんまり生意気だと、殺しちゃうよ」
―――アダムとしての力を使わなくたって、この腕一本あれば君のような人間、簡単に殺せるんだから。
睫毛が交差しそうなほどの至近距離で、雲雀は倫子をゆっくりと窘めた。
爪先立った倫子の体が、ひくりと震えている。
「、…っ」
「どうして僕が、君みたいな無礼者を手に掛けないでいるか、知ってる?」
優しく、諭すように。
細められた漆黒の眼に、苦しむ自分の姿が映る。
───今この状況で尚、蠱惑的な姿に。
「…足掻いてみせなよ」
もっともっと、足掻いてみせて。
「愉しませてよ」
その穢れた血を、流してみせて。
バキッ…。
「───っ!」
倫子の小さな拳が、雲雀の左頬を直撃した。
わざと避けなかったことは明白だが、首を絞めていた指がほんの一瞬だけ緩んだことに慌てて酸素を確保する。
更にその隙を見逃さず、がむしゃらに腕を振り払って倫子は雲雀から離れた。
「カ、ハッ…、…ハァ…」
急激に肺に酸素が行き渡る。
目眩を起こしかけたが、気を休めている暇はない。
───雲雀の殺意は、消えていないから。
痣が出来ているのだろう。
喉が痛む。
「…っこの、クソスズメが」
倫子が忌々しげに吐き出すと、殴られたようには見えない頬をさすりながら、雲雀はゆるりと口角を釣り上げた。
その微笑は、愉悦に満ちて。
「…きなよ」
遊んであげる。