AEVE ENDING
「何様だよ。同じアダムに身もあまるもクソもあるか」
「…本当に躾がなってない。殺してやりたいくらい」
にっこり。
無表情が板についている割りに、顔面筋肉は緩やかだ。
その美麗な笑みが、尚更ムカつく。
「スズメは麦でもつついてろ!」
中指を立てて宣戦布告する。
「ちょ、やめてよ二人ともさ~。先生困っちゃうじゃぁん」
一方的にいがみ合う倫子達の間に入ったのは、奥田だった。
「ほらほら、ミチコ。アミに付いててやんな」
奥田は倫子の頭を鷲掴みにして、アミの方へと追いやった。
心配ならお前が付けよ、とは言わない。さすがに。
なにより、こんないけ好かない男の相手よりアミと居る方が百倍マシだ。
倫子は足早にアミのもとへと駆け寄って、腹立たしい存在から離れた。
「倫子はアダムだよ、ヒバリ君」
倫子が去った後、奥田は雲雀に意味深に笑んで囁いた。
その不愉快を感じさせる出来損ないの微笑に、ざわり、皮膚を撫でる鮫肌のようなものを雲雀は感じる。
「気持ちはわかるけど」
遥か水平線を見やりながら、まるで警告するように。
「あんまり刺激しないでくれるかなあ。あの子、ああ見えてナイーヴなお年頃だからさぁ」
だらしなく嗤いながらも、男の眼は嗤っていない。
「―――それとも、興味があるかい?」
にやり。嘲笑。
歪んだ細い月のような視線がいけ好かない。
「…まさか。あんな放し飼いの動物に付き合うほど、寛容じゃないんだ」
雲雀が言い放った言葉に、奥田はにいと高く口角を釣り上げた。
「…、それは結構」
自分の生徒を動物呼ばわりされてその態度は教師としてどうなのか。
そう思う前に、この男が教師という器ではないことは明白だった。
雲雀は鼻を鳴らし、奥田から興味が失せたように離れた。
タイミングを見計らっていたらしい朝比奈と取り巻き達が、すぐさま擦り寄る。
奥田は余裕の微笑を浮かべつつもそれを眺めていた。
内心では深く、辟易している。