AEVE ENDING
「というか、一体なにをどうすれば天井を突き破るのかわからない」
そうだ、それで痛い目を見たのだ。
しかも明らかに巻き添えで。
「あぁ、あれ?雲雀のテレポート真似してみたら失敗して、あんななっちまってさあ」
「え?テレポートでここまできたわけ!?」
「当たり前じゃーん。他にどうやって来るってんだよ」
真醍はいけしゃあしゃあとしているが、実際、彼がやってのけたのは、「そうなの頑張ったね」、で済ませられるものじゃない。
ただでさえテレポートできるアダムは数が少ない。
まさかそれをやってのけるとは―――やはり猿は猿でも大した猿である。
「でも、この箱舟の場所も知らないのにどうやって…」
地図もなしに真っ暗闇のなか、歩いたことも見たこともない道を指定された目的地まで歩けと言われているようなものだ。
半ば唖然とする倫子に、真醍は首を傾げている。
そして。
「勘?」
簡潔な答えが返ってきた。
「お前らが船で帰って行く方向は見てたし、本島の方角は知ってっから。まあだから適当にエリア絞って、…まああとは勘だべな」
かん?
猿の勘?
「…負けたね、橘」
まぁ、勝敗なんてはじめから決まってたけど。
雲雀が無表情を張り付けたまま、嫌味をひとつ。
事実なだけに腹が立つのは仕方ない。
―――コンコン。
そうして暫く、闇組織や島の原状に関して話を続けていると部屋のドアがノックされた。
時刻は、夜九時半。
誰だ、こんな時間に。
(まさか、また雲雀の信者…)
「奥田だよ」
倫子が扉を開けるのを躊躇っていると、雲雀がそう口にした。
安心していいのか解らない訪問客にドアを開くと、そこには。
「こんばんはあ。お客さん、きた?」
火の点いていない煙草を咥え、よれよれの白衣姿…の筈が、今日は何故か、きっちりとアイロンが掛けられた白衣を着た奥田が立っていた。