AEVE ENDING
「───世界が、少しずつ少しずつ、僕らのものになっていく」
隣に立つ片割れが小さく嗤って見せた。
眼下に広がる血潮の地面が暗闇に溶けている。
暗い海の中に広がる臓器や肢体の一部は、「人」だったもの。
嗅ぎ慣れた血臭や腐臭が、深く鼻腔を塞いでいた。
足元に転がる剥き出しのこどもの青白い臀部が、暗闇に映えて厭に生々しい。
―――醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い。
俯きたいのに、俯けない。
(下を見れば、紅と闇が迫ってくる)
「…リィ、凭れていいよ」
顎を掴まれる。
そのまま成すがままに引き寄せられて、迫る闇から顔を逸らされた。
「…きもちわるい」
押し付けられた白い法衣の胸元から、自分と同じ香りがする。
「こいつらも、わたしも、全部全部、せんぶ、きたない」
醜い。
こんな醜悪な最期を遂げた人間達も、こんな最期を強要した私も。
「きたない…」
呟きに吐き出した吐息すら、血の臭いがする。
きれいなものきれいなものきれいなものきれいなもの。
きれいなものが、欲しくて欲しくて。
「───神様は、とても綺麗だったね」
ロゥがリィの自問に応える。
「神様は、どうしてあれほど美しいままでいられるんだろう」
血腥い香りを、僕らと同じに纏っていたのに。
「でも、でも、とおい…ね」
遠い存在だ。
触れることすら赦されない。
気高く美しく、尊いひと。