AEVE ENDING






「あの方は、きっと、私達を受け入れたりしないのに」

(…欲しい)


「まっしろなかみさま」


欲しくて欲しくて、堪らない。

あの綺麗な存在の下に居れば、きっとこの穢れも漂白されていくだろうに。



「だから、僕らは耐えなきゃ」

―――耐えなくてはならない。

胸を焦がす際限ない憎悪も、握り締めれば血が滴る汚れた掌も、白い法衣の下に隠した、醜い体も、すべて。


(今…、私が生きているのは、ロゥがいてくれたから)

この身体を包むこの腕すら汚れてしまった。

(私のせいで…)



「ゆるされたいの」

だからこそ。

(ロゥに、洗礼を与えたいのに)

この汚れた身では赦されない。
罪は消えないのだから、だからこそ、だからせめて、赦して欲しい。

(ロゥ…、ごめんね)

法衣に頬を擦り寄せる。
ひんやりとした法衣が、肌に優しい。

ロゥの心音が耳に響く。
この心臓と同じ、音。


「リィ…、帰ろう」

唇で慰められる。

ロゥの喉を振動させて発生するその音は、リィの鼓膜を震わせた。


(いつだって、傍にいたわ)

疲れた時、小さく息を吐くくせも。

この身体が眠りに就いた後、悪夢に魘されないようずっと抱き締めてくれていることも。


―――全部。



(大切な大切な、片割れを)


神様、どうか。



歪み始めた歯車は当事者たちの手には負えない。

矯正と廃棄の選択肢を我々ははじめから手放しているのだから。






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