AEVE ENDING
(それを君は、呆気なく覆す)
本来なら、テレパスだって交わすことは不可能な筈なのだ。
潜在能力が限りなく強大である雲雀の思考は、それだけで人を殺せる程度には圧倒的なのだから。
(―――それなのに君は、僕と普通に会話をしている)
壇上に立つ橘倫子という人物に、そんな気骨があるようには見えないというのに。
(大体、この僕に思考を飛ばすこと自体、通常じゃ考えられない)
他人を侵害し蹂躙するのは嫌いではないが、自分がそうされるのは我慢ならない性質だ。
生徒だろうが教師だろうが無知な人間だろうが、自分の頭の中に勝手に入り込むなんて真似、赦される行為ではない。
だからこそ、産まれつき備わっているストッパーとは別に、更に強いストッパーを故意に掛けている。
何人にも侵略されない為に、思考に内からも外からも鍵を施している。
(君の思考が垂れ流しなのはともかく、それが僕のなかに入ってくる事自体、有り得ないことなのに)
そうだというのに、雲雀自身の思考さえもが、倫子に流れている。
正確には、彼女に流れたのは雲雀が見たビジョン。
(大体、何故あれを視たのかすら分からないのに)
自らが視ようとしたわけもなく、己の意に反して、自身の能力が勝手にそれを視せたのだ。
(―――まるで、)
彼女の声に、応えたかのように。
(…益々、有り得ない)
倫子の背中を眺めながら、雲雀は不可解な現象について思考を巡らせた。
(これじゃあ、僕が人助けをしたみたいだ)
そんな甘ったるい信条なぞ持ち合わせていないし、持ち合わせようとも思っていないのに。
(…不愉快だね)
得体の知れないなにかが巻き起こっていく前兆のようで。