AEVE ENDING
(…力が微弱で、感知できなかったからですか)
恐らくはそうだろう、という答えをテレパスで伝える。
「うん、アタリ」
向かい合ったまま奥田の両手に両手を捕まれて、倫子は大仰に溜め息を吐いた。
奥田はこちらを見ていない。
握った手を見つめながら、俯く短い睫毛に。
(……私は、満足してるよ)
伝えるのは、感謝なんかじゃない。
(それでいい)
奥田が、小さく笑う。
少しばかり優しくなった目尻に、女の子はみんなコレに騙されるんだろうなぁ、なんて暢気に考えた。
体内に流れるアダムとしての能力が最低値以下。
そうなれば体から発散される無駄な能力の蒸発もない。となれば、他のアダムはそれを感知できない。
つまりは、そういうことだ。
(奥田の直感力は、能力の流れを感じ取ってのものだから。私じゃいつまでたっても、奥田のセンサーには引っかからない)
なにせ能力を包んでいる「皮」が違うから。
だからこそ、直に触れるしかない。
奥田の瞼がゆっくりと閉じられた。
繋がった手の先から、ヒリヒリと電流が流れてくるような感覚。
(ただの直感力でさえ、こんなに体へ負荷が掛かる…)
媒体と化すだけの体は、それなのに悲鳴を上げてばかり。
「―――ねぇ、どうして橘は前に出されたの?」
「力の流れが微弱過ぎて奥田先生の触手が感知できないからだろ」
「うわ、それってかなり恥ずかしい」
「今更だろ、イヴなんだから」
後方から囁かれる生徒達の声は、雲雀の耳にも届いていた。
(あんな落ちこぼれといっしょくたにするから、家畜が一丁前に粋がるんだよ)
耳障りな陰口は、愚の骨頂。
自らの狭心さを露わにするだけの、愚行。
(でも、度胸だけは認めてあげるよ)
本当に落ちこぼれなら、雲雀に近付くことすらままならないのだから。
過信ではなく、能力差が開きすぎている雲雀と倫子では、その距離間にどうしても摩擦が起こる。
それは力のぶつかり合いというわけではなく、強力過ぎる雲雀の能力が、相手の体に物理的な痛みを施すのだ。
ただの人間に近い、橘倫子。
「神」と謳われる、雲雀。
あまりに強大なアダムは、時として同種にすら棘となり毒となる。