AEVE ENDING
(みんな、そうだ)
この箱舟に収容されたアダムのみならず、世界中のアダム達が。
「人間の腹から産まれてきたくせに、たまたま遺伝子変化が起きただけの病人が、自らを神と違える」
それこそ、余りにも愚昧で傲慢ではないか。
「…人間もアダムも同じだ。女と男の間に産まれ生きて老いて、死んでいく。そこに違いなんかない」
それなのに、この世には偽造された神が溢れている。
(軽率を罪と捉えろ)
鍾鬼の眉が小さく寄る。
わざわざ首を絞められた状態で相手を挑発する必要はなかったのだろうが、生来黙ってはいられない口が勝手に動いた。
「───その人間臭い口調、癇に障る」
「悪いね、半分は人間なもんで」
皮肉を口にすれば、首を捕まれたまま放り投げられた。
「…っ、」
受け身を取ったが、凹凸が激しい瓦礫の上ではあまり意味がない。
裂かれた腹を強かに石膏に打ちつけて、痛みに顔が歪む。
しかし呻く倫子をよそに鍾鬼は憎々しげに吐き捨てた。
「───お前みたいな奴がいるから、この世界は下らない正義感やら偽善やらが溢れて、汚くなる」
知るか、間抜け。
正義だろうが偽善だろうが、倫子にとっては今は腹の痛みのほうが最優先だ。
「俺にこの話を持ち掛けてきた男が、この計画には必要なものが在ると言った」
脇腹を押さえ、転がった先から鍾鬼を見やれば。
「お前の言うとおり、アダムにも格差がある。愚かな者、小利口な者、憐れな者、蔑まれる者、憧れる者、手本になる者、相容れない者、従う者、弱者、強者…」
ねぇ、でも。
「それらに当てはまらない、唯一の生き物がいる」
『あの男は神になるために産まれてきた生き物だ。アダムでありながらアダムを裁く者、それが赦される者―――』
それは、誰?
囁くような声で問われたそれに、答えを考える暇などなかった。
(担がれる、唯一無二の存在)
考えるまでも、ない。
「…雲雀、」
声か、震えたのは。
(解っていた筈なのに、今更)
今更になって、あいつが憐れでたまらない。
(あんたは、そんなものを必要としていないのに)
そのカリスマと能力故、周りが狂信的に担ぎ上げようとする。
(───雲雀)
あんたは、なにも望んじゃいないのに。