AEVE ENDING
「…とんでもないエゴだ」
意外にも、鍾鬼から漏れたのは気が抜けた笑みだった。
伝わったとは、思わないけれど。
「…ほんとだよ。いつからこんな図々しい女になっちゃったんかな、私」
「図々しさというより、それは傲慢だ」
「…さいで」
「サイデ、とはなんだ」
―――おかしな奴。
翻弄される波のなかでもがく、純白の者。
「…私、あんたのこと嫌いじゃないよ」
言ったら、ほら、目を丸くするから。
(憎めない)
「おかしな女だ…」
そして少し疲れた顔で笑うこの憐れな男を、倫子は助けてやりたいと思った。
(ねぇ、奥田、私は)
いつから、こんなに浅はかな女になっただろう。
(この醜くふやけた手で、誰かを助けることができるのか)
試したい、とは言わないが。
「馬鹿馬鹿しい限りだ」
「ほんとだよ」
そう吐き捨てるこの男を、純粋に嫌いではないと考えてしまうのだ。
(雲雀に、会いたいな…)
きっとあんたは、神様のような傲慢さを以て、この不可解な葛藤や安堵、胸を掻くような苦悩をあっさり解決しちゃうんだろうけど。
(あんたの傲慢っぷりを前にすると、なんかもう、色んなことが馬鹿馬鹿しくなってくるから)
『…馬鹿だね、橘』
その真っ直ぐな声で、愚かな私を正してみせてよ。