AEVE ENDING
「……、お前も、人の残虐さを目にしてみればいい。或いはもうわかっている筈だ。お前は人でありながら、己を神と傲る人間達の手によって、醜く造り変えられたのだから」
早口にまくし立てた男は、なにを見ただろう。
或いは同じような、地獄を見たのかもしれない。
「…人を殺したって、あんたが汚れるだけなのに」
他人の血を流して綺麗なままでいられる男を、唯一ひとり、知っているけれど。
「…私もあんたも、雲雀にはなれないんだよ」
神の如く罰することなど赦されない場所に立っている。
「あんたはまだ、汚れる余白を持ってる」
だから、もうこれ以上、汚れちゃだめだ。
「その綺麗な手を汚すなよ。箱舟で一緒だったあんたの手は、箸を持ってたくあんを食べたし、私の頭を撫でてくれたし、食べ終わった食器を片づけてくれた……たまに首絞めてきたけど、でもさぁ」
頼むから。
「―――そのいい手を、人の血で濡らすな」
これはエゴだ。
私のように醜いだけの生き物を産み出したくないだけの、ただのエゴ。
(この苦痛は、私だけのものでいい)
「懐柔する気か?」
「そんないいもんじゃねーよ」
ただ、ただ身勝手に、解放してやりたくなったのかもしれない。
過去に片足を捕らわれた男を、まだ大丈夫だと、救ってやりたくなったのかもしれない。