AEVE ENDING





(…俺は、類似点で言えば、双子とほぼ同じだ)



―――遠い母国の地で。

産まれたばかりの頃は、なんの変哲もないどこにでもいる赤ん坊だった。

閉鎖的で貧しい村に産まれたが、両親と兄に愛されて育った幸せな日々は、今でも鮮明に思い出せる。



『鐘鬼、薬草を摘んでこよう』
『はい、あにさま』

アダムとして目覚めたのは、五つの頃。

薬草集めの途中、絶崖から足を踏み外した兄を助けようとしたことがきっかけとなり、覚醒を迎えた。


『…あにさま、』

その未知の力は至極自然に体へと馴染み、体質が変化した違和感などなにもなかった。
両親は驚きながらもアダムとしての自分を受け入れ、無事に助けることができた兄は鼻が高いと笑ってくれた。

―――あぁ、何故、そこで終わりではなかったのか。


古い群衆の村だった。
古い戒律、古い風習、閉鎖的な人柄、集団心理。

その村で、アダムは「忌み子」と呼ばれていた。


『忌み子は浄めなければならぬ』
『洞穴の滝ツボに落とせばいい』
『忌み子は村に災厄をもたらす』


コ ロ サ ナ ケ レ バ 。



『―――殺さなければ』






バキッ。

鈍い音が、間近で耳を刺激する。
音がしたほうを見れば、足元に倫子の身体が転がっていた。

「…助けに来たんじゃなかったのか?」

容赦ない攻撃を繰り出す雲雀に呆れる。
仮にも救出しにきた女が、人質と言っても過言ではない状態で操られているのだ。
それを承知で反撃するなど、無謀としか言えない。

(…或いは非道、か)





「…橘はそんなんじゃ壊れない」

他三体のマリオネットは既に壊れていた。
ひしゃげた生身の体がみっつ、壁の端に重ねられている―――まるで本物のマネキンが放置されているように。

それを一瞥して、鐘鬼は息を吐いた。



 ··
「これの傷みを知らない男が、知ったような口をきく」

なにも知らずに、ただのうのうと生きてきた、傲慢な神の分際で。





< 655 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop