AEVE ENDING
昼前には雨が降り出した。
遠くで雷が光るのを見て、まるで嵐の前のようだと感慨深く空を眺めて、そして。
「…それで、そのまま風呂に漬かったまま二度寝して?僕を待たせた上に、馬鹿のくせに風邪を引いたわけ」
ひしひしと顔面に降り注ぐその怒りといえば、あの、ちょ、イタ…。
「馬鹿って、馬鹿は言い過ぎなんじゃ…ヘッブシッ…!」
「笑いが取りたいの」
「ちが、ぶえっくしッ…!」
「…もう黙って」
倫子が止まらない鼻水をなんとか塞き止めようと鼻を啜る。
雲雀の私室、プラス倫子の部屋がくっついたこの空間に帰ってきて、まだ一週間しか経っていない。
アミと奥田の邪魔が入って以降、そういう雰囲気にはまだ一度もなっていなかった。
(…だからつまり、雲雀との一線は越えていない)
あれ以来、それなりに関係が変わるかと思えばそうでもなく、相変わらずの雲雀様様で暴力と毒舌と蔑みに耐える毎日を過ごしていた。
「…あれ、どっか行くの」
ベッドのシーツにくるまって鼻をかんでいる倫子に背中を向けて、雲雀はぱたりと部屋から出て行ってしまった。
(―――無視かよ、)
それでも以前より距離が近付いたような気がするのは、…気のせいじゃないと思う。
けれど良好に変わるかと思いきや、実はそうでもない。
前にも増して倫子の存在を見なくなった。
というか、関知しないというか。
それなりに会話はするのに、ふとした瞬間にさらりと掛けた言葉を流されて、以前に増して単独行動をするようになった雲雀に、必然、倫子も独りで過ごすことが増えたようだった。
(…なんだよ、バカスズメ)
それが少し寂しい、なんて。