AEVE ENDING
「桐生が逮捕されて以来、彼らの動向がおかしくてね」
ぞろりと心臓を舐められた気がした。
とうの昔に過ぎた筈の過去が、波のように押し寄せてきて逃げ場がない。
『コレは、雲雀さんの身代わりになるしか能のないただのお人形だわ』
―――煩い。
『これが人間なのか…』
『汚らわしい。…見たくもない』
『こんなもの、存在していいわけがない』
―――う る さ い。
パキン…。
「倫子、」
目の前に転がっていた石ころが、無惨にも弾け飛んだ。
無意識に墜ちていた意識を、奥田の手が引き上げる。
「…倫子、過去だよ」
諭すように、けれどその言葉は他人事でしかない。
「…キモチワルイ」
全身に吹き出した汗が皮膚を蟲のそれのように伝う。
生き物のように体を嘗めてゆく液体が、酷く不快だった。
彼ら同様、拭っても拭っても拭いきれぬ、不快感。
「倫子、今は、今のことを考えましょう」
宥めるように肩に置かれたササリの手すら煩わしい。
(…あぁ、どす黒い感情が、殺意が、私を飲み込もうとする)
息が、できない。
溺れてしまう―――、過ぎた過去の深海にまだ、繋がれたまま。
「例の新制度交流セクションね、…彼らの起案なのよ」
胸をざわつかせる闇は、誰のものか。
「なに、ソレ」
唇が震える。
あの冷たい眼が、蘇っては消えて、倫子を支配した。
「雲雀くんの近くに倫子がいるのが赦せないんだろうね。きっと倫子を引き剥がすために、セクションを組んだんだと思うよ」
それはあらゆる手を遣い、最愛の神に纏わりつく無様な醜女を殺す為に。