AEVE ENDING
「バケモノ!」
「お前なんかアダムでも人間でもない!」
バケモノ
バケモノ
バケモノ
バケモノ
バケモノ
バケモノ
バケモノ
バケモノ
―――バケモノ。
こんな異質な空気に平然としていられるほど、橘倫子はイカれてない。
正常に戻った眼が、ノイズに包まれた自身を省みて、そして、探す。
ゆらり、定まらない視点で。
今にも、崩れそうになりながら。
―――ひば、り。
『ひばり』
その震えた唇がそう紡いだのを、ロビンは見逃さなかった。
ふらり。
力尽きたように倫子の体がぐらつく。
思わず伸ばした手はしかし、空を切った。
「…シュラ、」
いつの間に近付いてきていたのか。
周囲を取り囲んでいたアダム達が暴動を起こす前に現れたタイミングは素晴らしい。
(―――なにより、呼ばれたから…)
華奢な唇に求められ、だからこそ、その血だらけの手を取ったのだ。
倫子を片手に抱え、こちらに一瞥をくれる。
まるで値踏みような視線に、思わず肩を竦めた。
「…橘、僕が解る?」
けれど雲雀はすぐさま倫子に向き直り、その脱力した身体に話し掛けた。
ぐったりと蒼白になった顔色は、先の闘いで傷だらけになっている。
その傷に触れないように、雲雀の指が倫子の乱れた前髪を掻き分ける。
―――ただそれだけの仕種が、あまりにも露骨で。
「ひばりさまっ」
それに耐えかねた女生徒の一人が、悲鳴染みた声でその名を呼んだ。
それに触発され、雲雀の登場で静かになっていた幾人かが再びざわめきだす。
「雲雀様、そのような穢らわしい者に触れるのはおやめください」
「愚か者がますまず頭に乗ります。どうか」
「いくらパートナーといえ、御自らがバケモノを気遣う必要などないのです」
似たことを手を変え品を変え、繰り返された。
やはりジャパニーズはおかしい。
倫子を気遣う雲雀に、焦がれているのか。
(―――あぁ、母国のアダム達がアナセスに向けるのと同じ眼だ)
羨望、嫉妬、崇拝、服従。
絶対的なそれを前に、平伏すしかない弱者の、性質。