AEVE ENDING
「あれはもう、アダムじゃないわ」
部屋に戻ったニーロが至極神妙な顔で言った。
ジニーは気分が悪いとベッドに伏せている。
恐らくは修羅の毒気にあてられたのだろう。
精神系の鋭い感覚を持っている上、彼はまだ子供だ。
あの馬鹿馬鹿しいまでに鋭く研ぎ澄まされた気に殺られてもおかしくない。
「アダムなんて規格じゃ収まりきらない。気持ち悪い…」
ニーロが爪を噛む。
(…気持ち悪い、か)
あの男は綺麗過ぎるのだ。
毒となるほどの、純正。
ヒトもアダムも、あまりに純粋たるものを胎内に取り込めば異常が出る。
水がいい例だろう。
なんの混じりけのない純然たるものは、毒と化す。
あの男は、それの比じゃない。
「彼は、私達よりずっと先を歩いているのかもしれませんね」
ぽつり。
どこか悲しむように落とされたアナセスの言葉に、ニーロと視線を合わす。
(組み込まれた、破滅遺伝子…)
あの男は、全人類の、全アダムの、絶対的な脅威となる。