今宵、月の裏側で
幹生は休み時間になるとすぐに駆け寄ってきて彼女の話をした

『なぁ、達ぅ〜さくらちゃん彼氏いるかなぁ?』

ふにゃふにゃで頬を少し赤らめてそう喋りだし

『達、彼氏がいるか聞いてきてくれよぉ〜』


幹生は気の抜けたサイダーのような声で言った


僕は気が乗らなかった


『いやだよ、自分で聞いてよ』


と、断った。しかし幹生の性格は2年の付き合いの中でだいたいわかる。



そう、彼はそう簡単には引き下がらない。っと言うか僕が動くまでとてもしつこい


それをわかっているから余計に嫌なのだ


『一生のお願い!聞いてきてください』


幹生は顔の前で手を合わせて、土下座をした



幹生の口癖は『一生の』、達は幹生の人生、何回分お願いされたのか数えるのもめどくさいほどだった


でも、なかなかNOと言えない性格の達は、そんな幹生の願いを聞いてしまう


僕が席を立つとみきおが泣きそうな顔をして


『おぉ〜オレの神様、仏さま』


仏壇に手を合わせるみたいに僕に手を合わせて言った

そんな幹生を見て達は

『トイレだよ!』

と、言い放つと、手のひらを返したように

強烈に後ろからアッカンベーをしていた
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