今宵、月の裏側で
キーンコーンカーンコーン
帰りのチャイムが鳴り赤い夕焼けの光が窓から廊下や学校を一気に染めた

達は幹生から逃げようと急いで帰りの支度をしていた
そのとき、隣の席のさくらが達に声をかけて来た

さくら『ねぇ、達くん』

達はいきなり名前で呼ばれて動揺して

達『なんで、名前を知ってるの?』

さくらは何かに気付いたように


さくら『お友達からそう呼ばれてるのをきいちゃって』


『いきなりじゃビックリするよね、ごめんね』


確かにビックリしたが、ちょっとかっこつけて

達『別に大丈夫だよ』

さくら『そう、それならよかった』

さくらは安堵の表情を浮かべた

少し沈黙が続く中、達は幹生が気になってしょうがない
幹生は友達の岡くんと楽しそうにバイクの話をしていた
さくら『あの』

幹生に気がいっていた達は『ハッ』っとした

達『ん、な、なに?』

さくら『達くんのお家ってどこらへん?』

達『あそこの坂道をずっと登った頂上だよ』

さくら『そうなんだぁ、帰り道大変だね』

達『まぁね、でも慣れちゃった』

そう達が答えると遠くから
『さくらちゃーん、一緒に帰らない?』
と達の幼なじみのさゆりが声をかけて来た
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