手紙

　それを見たクラスメートの反応は、どこぞの三流役者よりも素晴らしい演技だったと言えましょう。
「どうしたの？」
「喧嘩したの？」
「あんなに仲良かったのに……」
「話聞くよ」
　そうやって心配しつつ、クラスメートは何があったのかを探りにかかりました。もちろん彼女ではなく、あなたに、です。
　あなたは真っ直ぐで、何があってもめげない人でした。まさか、これをいい意味で捉えてなどいませんよね？　あなたは自分の欲望に常に真っ直ぐで、ちょっとやそっとの障害くらいではめげない人、と言いたいのです私は。
　ですからあなたは馬鹿がつくほど正直に、おもしろおかしく話して聞かせたのでしょう。なぜか知らないが避けられている。むしろ、いじめられている、とでも言いました？　「女子」という獣に。
　「女子」からしてみれば、あなたは被害者、彼女は悪者です。「女子」は常にそういう単純な思考回路でできています。そして「女子」は、何でもかんでも自分たちで裁こうとする野蛮な生き物なのです。
　彼女の場合も、例外ではありませんでした。
「ひどい」
「仲良くしてもらってたくせに。人の親切を何だと思ってるの」
「自分が何でもできるからって」
「人の気持ちなんて考えてないんだよ」
　ひどい？　何がでしょう。自分たちのしていることは棚上げですか。
　仲良くしてもらってた？　頼んだ覚えはありません。
　人の親切？　「女子」こそ、人の親切の意味を履き違えている奴はいないと思います。親切は、誰かの敵(かたき)を代わりに甚振(いたぶ)ることなのでしょうか。
　自分が何でもできるから？　ただの僻みですね。
　人の気持ち？　考えていないのはどちらなのでしょう。そうやって陰口を叩く人間が、人の気持ちをわかっているとは到底考えられません。