手紙
『今日は○組の××と△△が応援に来ていたらしい。××が差し入れだと言っておにぎりをくれたが、気持ち悪かったので捨てた。毒が入ってるかもしれないものなんか食えるわけがない。試合には負けた。あいつらのせいだ。
 終わったあと、あの二人に励まされた。人生の終わりだ。
 △△はブスのくせに何を頑張ってんだ? でも簡単そうだと思った。』
 これが事実です。嘘だと思うのならURLを書いておくので、ご自分で確かめて見てください。あの人は今別の場所で醜態を晒していますが、前のも晒しっぱなしなのです。私の言葉など信じないでしょうが、ご自分の目くらいは信じるでしょう。
 簡単そうだと思った。私は最初、この言葉が理解できませんでした。あの人は数人の女子に対しても同じような表現をしていたのですが、私にはやはり理解することは不可能でした。その言葉の意味を知ったのは、つい最近です。
 その意味を話す前に、彼女のことについて話さねばなりません。悪者になってしまった彼女とあの人のことを、特に。
 あの人は、彼女になど全く興味はありません。それでも彼女は諦めませんでした。少女漫画の読みすぎなのです。想いは必ず届くなんてものは、幻想に過ぎません。しかも彼女は主人公を自分に置き換えてしまっていたのですから、もう手に負えませんでした。
 私は黙って見ていることしかできず、あなたの話を聞かされるはめになったのです。
「あの人のこと、好きかもしれない」
 あなたはそんな嘘をつきました。もうとっくに好きだと思い込んでいたくせに、かもしれない、とわざとぼかしたのです。
 下手な演技に飽き飽きしていた私は、自分もその真似事をしてみることにしました。
「うっそ! 本当に?」
 しかしあなたは、それにたいそう満足していましたね。一度本物の演技を見ることをおすすめします。
「どうしよう……どうしたらいいと思う?」
 床に額を擦り付けて、彼女に謝るべきだろうと私は思いました。自分からそうなるように仕向けておいて、どうしたもこうしたもありません。被害者面もいいところです。
 少女漫画のヒロインというのは、ある程度自分のことを「可愛い」と思っていないとできないようなことをします。あなたもそうでした。しかし私は嘘が吐けないのではっきり言いますが、あなたのは単なる思い違いの見当外れです。

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