執事の名のもとに
「…海琉。」
俺等を代表するかのように敦は海琉の前に一歩出た。
その表情はなんとも苦しそうで、見てるこっちも辛くなった。
「敦さんが言いたいことはわかってます。」
そこでいったん海琉は瞳を閉じた。そしてしばらくしてそっと瞳を開けた。
「…でも、俺は奏真を継ぐ者です。両親ともばれたら戻るという条件でここに来ました。なので、それはちゃんと守らなければ…これから家元としてやっていけないと思うんです。」
海琉…。
俺等が思っていたよりずっと海琉は大きかった。
身体とかじゃなくて、心が…――。
女なのに、男の俺たちよりたくましいとそう感じた。