銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
『パパ、戦争に行っちゃうの?』

心配そうにレイセントの右手を握るキャルナス。

瞳一杯に涙を抱える。

『行かないよ。

私は何処にも行かない。』

レイセントは最愛の家族達を、一人一人抱き締めた。






何日も経ったある日。

キャルナスとマナは、エルヴァータ家の議会に出ている両親を見送ると、二人で留守番をしていた。

初めての二人だけでの留守番。

キャルナスは勿論の事、緊張していた。

大きな大きな此の屋敷中のありとあらゆる、窓、扉に鍵を閉める。

『マナ、ボクはね、将来パパとママみたいな、人の命を救うお医者さんになるの!』

レイセントとサリアは医者だった。

二人ともマナを出産した、都心の大病院に勤めている。

だが小さな赤ん坊はベッドで寝息をたてていた。

寝ていたのだ。

元々まだ一歳の赤ん坊にキャルナスの話が解るわけがない。

『むぅ……マナー、聞いてるー?』

ベッドで寝ている赤ん坊をキャルナスは抱く。

その時だった。


『カー』


外から聞こえる鴉の声。

其れに驚いたキャルナスは、抱きかかえていたマナを思わず離してしまった。


グシャ


気持ちの悪い音が、静かな屋敷に響き渡った。

思わず目を瞑ってしまったキャルナスは、長い沈黙の後、目を開けた。

『マ……ナ……?』

床に寝たわっているマナからは生気が感じられなかった。

まさかこれだけで死ぬ?

眠っているだけだろう。

そう思いキャルナスはマナをベッドに返した。






『ただいま。』

夜中の三時になった頃、レイセントとサリアは帰ってきた。

『お帰りなさい!』

キャルナスは帰ってきた二人に抱き付いた。

『ちゃんとお留守番していた?』

サリアの問いに頭を縦に振るキャルナス。

『うん!』

そう、とサリアは微笑した。

『マナのお世話は?』

所が、レイセントの此の問いにキャルナスは戸惑ってしまった。

『マナ……起きないんだよずっと?』

嫌な予感が二人の脳裏にはしった。
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