銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
冗談混じりに言ったのに、キャルナスは弟の名前を真剣に考えた。

サリアは笑いながら、愛する息子の艶やかな髪を撫でた。

『ではそうしましょう。マナ・シャルドネ。

私達の新しい家族ね。』

最高に幸せだった当時。

然し幸せは音を起てて崩れようとしている。

其の事に幼すぎたキャルナスは気づかなかった。






あれから数日経った朝だった。

『おはよう、キャルナス。』

まだ眠いのか、目を擦っているキャルナス抱きかかえると、
父親のレイセントはキャルナスを玄関に連れて行った。

『新しい家族だよ。』

サリアの胸の中で眠る、新しい家族。

母から其の子を受取ると、キャルナスは慌てて転びそうになった。

そんなキャルナスを見て、サリアとレイセントは笑った。


トクントクン


小さな新しい命の、新しい鼓動が聞える。

何て心地の良い音色か。

『マナ……ボクの弟。』

手を差し出してきた、まだくしゃくしゃの顔をした赤ん坊。

その手を取ると、とても温かい。

金色の髪も、宝石の様な葉色の瞳も自分と同じ。

家族……其れにしかない繋がりを感じさせた。






マナが家族になってから、約一年の月日が経った。

『ただいま……』

其処には毎晩、深い溜息をつきながら帰ってくる、レイセントの姿があった。

『どうでした今日は?』

『どうもこうも無いよ。

分家のうちにまで、戦争に加担しろとよ。』

シャルドネ家。

三大陸の内の一大陸を占める王家・エルヴァータ家。

エルヴァータの当主の異母兄弟が、レイセント・シャルドネにあたるのだ。

今回、隣の大陸との莫大的な戦争に加担するよう、エルヴァータの当主はレイセントに要求してきたのだ。
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