銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「隠れてないで出てこい。

茶亜夢!」

美紗の陰からケタケタと笑い声がした。

ぬっと陰から出てきたのは、彼の茶亜夢だった。

彼女はヴェルディに殺された筈だった。

「何で貴女が?」

頬に冷や汗が流れる。

おかしい、こっちの方が圧倒的に有利な筈だ。

なのに恐れている、此の悪魔を。

「ふふふっ!

身を引いた方がいいよ、珀月ちゃん。」

珀月が後ずさる。

まさか珀月も自分と同じ事を感じ取ってるのか?

「悪魔将軍・ルネサンス。

貴女の事だろう。」

悪魔将軍……ルネサンス……?

「……良く知ってる事だ。

御名答だよ死神。

私はルネサンス。再生の悪魔。」

口調が変わったかと思うと、茶亜夢……いや、ルネサンスは形状を歪ませて姿を変えていく。

次見たとき其処に立っていたのは、美しい棟橋 飛来でも、茶亜夢でも無い。

赤いマントに黒いシルクハット、黒いスーツを身に着けた、茶色い長い髪を伸ばした……そう、現代でいうマジシャンの様だ。

エメラルド石をそのまま埋め込んだ様な瞳に薄紫色の唇。

キャルナスや珀月と並ぶと衰えるが、此の男も端正な顔立ちだった。

「初めまして。

ルネサンス・ディルクだ。」

どうしてだろう。

目前にいる悪魔は初対面にもかかわらず、身に覚えのある感じがする。

悪魔に親近感なんて良く無いのだが、正しく其れだ。

「ははははは、身に覚えが有りますよね、皆さん。

再生の悪魔。

屍を再生するのではなく、してからが本番なのですよ。」

樂しそうに彼は被っていたシルクハットを取ると、其れで顔を隠す。

次にシルクハットを被った時、彼はルネサンスでは無かった。

「嘘だ!?」

キャルナスが頬を凍てつかせた。

彼の顔形が変わっていたのだ。

目つきが悪い黒い目の下に赤い十字架の入れ墨をしている、大体、十代後半くらいの少年だろう。
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