トドケモノ 【短】
{心晴!}
ヒラヒラと手を振られあたしは彼女に近づく。
「朱里(あかり)。」
朱里はあたしの親友で、唯一あたしと直のことを知っている。
朱里は一度あたしの全身を見つめると眉をひそめる。
あぁ、くるな。そう思った。
{…また増えた?}
予想していた通りの言葉にあたしは苦笑する。
「うん…。」
この前のぶんの『ごめん』が最近届いた。
{…あのヤロー…!!}
あからさまに怒りを露にする朱里。
「…直を、悪く言わないで…。」
あたしは、きっぱりそう言った。
しょうがないんだよ。
仕事、忙しいんだもん。
そう精一杯の笑顔を見せる。
そうやって自分に言い聞かせないと、やってられない。
我が儘にはなれない。
せめて、断られたのならおとなしく受け入れなきゃ。
これ以上、彼の負担にはなれないもの。
そう思っていたけれど…。