アリスの作り方
戦闘漫画ではよくある光景だ。
だが目の前で起きているそれとは緊迫感が全然違う。
全身にピリピリと殺気が混じる緊張が伝わってきて二人から目線が離せない。
「隊長は相変わらず血気盛んだねぇー。あっ安心して俺はあんたに手出しするつもりはな
いから……アリスちゃん」
急に私の横から聞こえてきた声。
横を見てみると今まで私の前にいたはずのジョーカーさんが、私の隣でまるで子供のようにクスクスと笑いながら爽やかに声を掛けてきた。
いつの間に……私に手出ししないといいつつもスペードさんの仲間には変わらない。
一瞬でも気を抜けない……。
それにしてもこの人は目の前で仲間が戦っているのにどうしてこんな顔を出来るのだろう。
「怖い顔しちゃってせっかくの可愛い顔が台無しだよ。それに俺もそんな顔より可愛い顔で見つめられるほうが良いし」
怪訝な顔で見ていた私に対し微笑みながら爽やかに言う。
そんな寒気のしてしまう台詞でさえものにしてしまっている。
「私はあなたの事は信用してはいないので」
今のところ私は、一番ティックを信頼している。
強制的にこの世界に連れてきた人物とはいえ、一番この世界で時間を共有しているのは彼だからだ。
たとえティックが敵で彼らが味方だとしても……。