星屑
金曜日の夜の街は、相変わらず華やいでいた。


いつもの場所に佇み、行き交う人々を観察しながら、ネオンの色にため息を混じらせる。


馬鹿みたいな顔で笑ってるやつら、失業でもしたような顔して歩くサラリーマン、見るからにチンピラみたいな男たち。


彼らはまるで、あたしの姿なんて視界にさえ入らずにいるのだろう。


この場所に溶け込みすぎると、いつも生きているのか消えているのかがわからなくなる。



「ねぇキミ、おじさんと遊ばない?」


答えることもなくあたしは、男に背を向けた。


ここにいれば、こういったことも日常で、ヘドが出るほど気持ちが悪くなる。


足を踏み出した瞬間、「待って!」と言って掴まれた腕。


顔を向けてみれば、薄気味悪いオヤジが鼻息を荒くし、あたしを制止する。



「いくらなら良い?」


「離してよ。」


「行こうよ。」


「行かないし、離して。」


腕を掴まれたまま、繰り返される押し問答。


例えばこの場所では、どれほど大きな声を出そうとも、傍にいる人ですら助けてはくれないだろう。


思わず舌打ちを混じらせた、その刹那。



「それ、俺の女。」

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